Feature

2026.03.14

第01回
アンゼルム・キーファー《ヴァニタス》 2019/20年(前編)

香川 檀 (武藏大学名誉教授)

Anselm Kiefer
Vanitas, 2019-2020
Emulsion, oil, acrylic, shellac, wood, and metal on canvas
280 x 190 cm
Copyright Anselm Kiefer, photo credit: Georges Poncet

ひとの背丈の倍ほどの高さがある巨大な画面いっぱいに、植物の葉叢が描かれています。
ジャクソン・ポロックによる抽象表現主義の絵画と見紛うような、絵具と線の鬱蒼とした重なりに見えますが、よく見ると、枯れ草色の茂みには散った花びらがいくつか撒かれ、そして中央には一輪の花が、黒々とした茎の頭頂に咲いています。  

そして、その花のすぐ頭上には、本物の古びた西洋鎌(大鎌)が画面上端から逆さに吊り下がっています。鎌は収穫のための農具ですが、転じて、ひとの命や魂を刈り取るという意味で、西洋中世から死神の持ち物として図像化されてきました。いわば死の記号なのです。

(後半へ続く)


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