2026.09.13
第12回
カトリン・リンケルスドルフ:枯れたチューリップと<はかなさ> (後編)
結城 円 (九州大学 芸術工学研究院 准教授)

Ambrosius Bosschaert the Elder (1573–1621) ≪Vase of Flowers in a Window≫1618, Oil on panel, 64 × 46 cm, Mauritshuis, Den Haag, Inv. no. 679
出典:https://www.mauritshuis.nl/en/our-collection/artworks/679-vase-of-flowers-in-a-window
リンケルスドルフの作品には、近世ヴァニタス静物画との類似性も見られる。近世においてチューリップの切り花は、二重の意味で「ヴァニタス」を表象するものであった。まず、切り花であることから死にゆく過程にあるモチーフとして、はかない生を暗示している。またチューリップは16世紀中ごろに、コンスタンチノープル(今のイスタンブール)から西ヨーロッパに輸入されたもので、資本主義社会への変革期の中で、経済的な価値という現世のはかなさを表すものとして重要なモチーフだった。
このように彼女の作品は、死にゆく花の<はかなさ>を、日本側からもヨーロッパ側からもアプローチ可能なものとして見ることができる。
