2026.06.16
第07回
人生はしゃぼん玉
マーレン・ゴツィック(福岡大学 人文学部 教授)

Michaelina Wautier
Two Boys Blowing Bubbles
circa 1650-55, oil on canvas, 90.5 cm × 121.3 cm,
Seattle Art Museum
Wikimedia commons:
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Michaelina_Woutiers_Seattle.JPG
この絵画にはしゃぼん玉で遊ぶ二人の少年が描かれています。中央に描かれている少年がしゃぼん玉を吹き、もう一人の少年はそれが宙に漂うさまを興味深げに見つめ、はじける瞬間を待ち構えているように見えます。一見すると子どもの遊びを描いた風俗画のようだが、よく見ると、少年の顔立ちがきわめて精密かつ生き生きと描写された肖像画であり、と同時にヴァニタスの寓意画でもあることがわります。画面左端に寄せ集められているのは、ヴァニタス静物画の典型的なモチーフ——書物、バイオリン、消えた蝋燭、砂がすでに落ちきった砂時計——です。おそらく同じ作家が描いたもう一つのほぼ同じ絵画では、こうした取り合わせに髑髏が付け加えられているのです。少年たちとその幼い遊び自体が、この絵においてはヴァニタスの象徴となり、彼らの若さが限られたものであるように、人の命もまたはかないものであると示しています。
この作品の作者はミカエリナ・ウォーティエ(Michaelina Wautier, 1614–1689)で、当時は相応の成功を収めたフランドルのバロック期の女性画家です。しかし彼女はその後、数世紀のあいだ忘れ去られ、作品も「女性に描けるはずがない」として他の画家に帰属されてきました。この画家について分かっていることはまだ多くはないものの、調査による再発見がなおも進められ、いくつもの回顧展が開かれていることは、少なくとも当面、彼女の名声がはかなく消え去るものではないことを物語っています。
