2026.05.11
第03回
時の流砂
鈴木 賢子 (京都芸術大学 特任准教授)

Philippe de Champaigne
Vanitas Still Life with a Tulip, Skull and Hourglass
circa 1671, oil on panel, 28 × 37 cm, Musée de Tessé, Le Mans.
Wikimedia commons: https://commons.wikimedia.org/wiki/File:StillLifeWithASkull.jpg
アルブレヒト・デューラーの版画《メレンコリアI》(1514年)と《書斎の聖ヒエロニムス》(1514年)には、砂時計(英hourglass; 独Sanduhr)が描きこまれていることにお気づきでしょうか。砂時計は、いわゆるヴァニタス画においても意外に出てきます。近世のヴァニタス画において、砂時計は、しゃぼん玉やろうそく、空のグラスと同様、人の命や現世のはかなさを表す寓意として描かれます。
ヴァニタスの寓意のなかでも砂時計がやや特殊であるのは、大鎌を振るうサトゥルヌス(土星)の「すべてを破壊する」時、すなわち、地上のあらゆる存在が逃れることのできない時を、時間の計測器そのもので示すという観念の重複性にあります。
今回は「砂」に注目します。ヴァニタス画において、砂というモチーフは単体で描かれるというより、たいてい「砂時計」の一部として描かれます。透明なガラスのなか、さらさら流れ落ちる砂は、留まることのない時の流れはもちろんのこと、天空の円蓋の下、形を失い潰えていくこの世界を表わしているでしょう。
