2026.06.28
第09回
石内都――絹のシャボン玉 (後編)
マーレン・ゴツィック(福岡大学 人文学部 教授)

石内都「#75 碓氷製糸 安中 2011」 出典:石内都『石内都:絹の夢』青幻舎、2012年
ファッションを通じた美的表現にも示された彼女たちの解放的な志向は、しかし、やがて時代の波に飲み込まれていきます――戦時下、女性は以前男性の職業とされた仕事を果たしたとしても、国家体制に従属することになり、服装も目立たず実用的であることが求められたのです。そして戦後、女性も洋服が主流となり、絹は化学繊維に取って代わられました。
かつての生産地の人々の多くは都市に移り住み、桑畑さえも姿を消しました。そして法の下での男女平等が新たに定められたにもかかわらず、保守的な社会のなかで女性の主な役割は主婦とされました。石内は「夢は破れ、夢は消える」*と記しているが、ヴァニタス画のシャボン玉のモチーフを想起させる言葉です。
*石内都『写真関係』筑摩書房、2016年、80-94頁
